ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
見開いた両目は、ほんの十数メートル先の交差点の手前に立つ、ふたつの人影を凝視している。


あれは……雄太と、田中さん。


ふたり仲良く並んで笑顔で会話を交わす姿に、息ができないほどの衝撃を受けて、あたしの中の時間が止まった。


なんで、一緒にいるの?


雄太、なんで田中さんと一緒に下校してるの!? 最近じゃあたしとだって一緒に下校していないのに。


休み時間に立ち話をしてるだけじゃなかったの? 学校が終わった後も、こうしてふたりの時間を過ごしていたの?


あたしの、知らない間に?


声にならない問いかけが、次から次へと浮かんでくる。


頭のてっぺんから冷たいなにかがスーッと下りてきて、凍えるように冷たい指先はピクリとも動かない。


雄太が、あたしじゃない女の子と一緒に下校している。


この状況を、どう受け止めればいいのかわからないんだ。


理解することを、自分の頭と心が拒否している。


認めたくない。この光景には深い意味なんてない。


きっとそうだ! そうに決まっている‼


……でも。


そんなあたしの必死の現実逃避も、すぐ無意味になった。


あたしの目の前で、一緒に交差点に踏み出したふたりの、手が。


お互いの手が、しっかりと繋がれるのを見てしまったから。
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