わたし、BL声優になりました
「じゃあ、恋の相談?」

「は?」

 ゆらぎが自販機の前で飲み物を選んでいると、突然に緑川はそう言い放った。

 驚きで声を上げたと同時に、その勢いで自販機のボタンを押してしまっていた。

 ガコンと鈍い音を立てて出てきたのは、期間限定商品の『恋する甘い天然水』だった。

「ウグイス先輩のせいで、百円が無駄になっちゃったじゃないですか」

「ボタン押したのは君だよ。それにボクは黒瀬の恋のライバルだってこと、忘れてない? 返事はいつでも良いって言ったけどさ」

 そう言い、緑川は椅子から立ち上がると、ゆらぎにゆっくりと近づく。

「な、なんですか……」

 後退りするも背中は、すでに壁際まで追い込まれていた。

「君が意識してくれないなら、俺のことを意識させるまでのこと……」

「ウ、ウグイス先輩? これは一体何の冗談ですか」

 この状況は所謂、『壁ドン』というものだろうか。

 壁と緑川に挟まれ、身動きが取れなくなったゆらぎは目蓋を閉じる。

 すると、コトンっと小気味良い音がして、閉じていた目蓋を開いて、辺りを一瞥した。

「……え?」

 状況を理解出来ずに、ゆらぎは茫然とする。

「紙パック捨てただけだけど? 何かされると思った?」

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