羊かぶり☆ベイベー
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あのピンク色の羊のオルゴール。
あれは結局、買ってしまった。
そして、お土産屋さんの通りを出て、今回、宿泊する旅館へ既に到着していた。
旅館の部屋の割り振りは、事前に大体決められていて、女性は基本2人部屋。
私は更に引き続き、今日1日一緒に回っていた先輩と2人部屋。
夜の宴会まで、まだしばらく時間があるので、寛いでいるところだ。
斯くして、宿泊部屋の机の上に置いた、羊のオルゴールと向き合っていた。
自分を羊の様だと覚れば覚るほど、離れ難くなってしまった。
裏返すと、曲名が書かれている。
『♪︎メリーさんの羊』
そりゃ、そうだろう。
これほど羊を強調したデザインをしていて、それ以外の曲が流れるオルゴールがあるなら、是非教えていただきたい。
しかし、それにしても、じっと見つめていると、ますます愛着が湧く。
今まで、犬や猫にしか目がいかなかったのに、羊が気になるなんて。
共通点を人から気付かされただけで、何となく愛しく思える。
私好みに丸々したフォルムもそうだが、警戒心が強いが、慣れれば懐くところなんかも、案外可愛いじゃないか。
自然に頬が緩む。
「伊勢さん、それ相当、気に入ったのね」
向かい合って寛ぐ先輩に、頷いて返事をした。
先輩は微笑みながら、私を見守っている。
その後、談笑をして、少し時間が経った頃、先輩は自身の腕時計を然り気無く確認した。
「そろそろ宴会の時間ね。大広間へ移動しましょう」
「あ、はい」
返事をして、オルゴールは一旦、箱へ戻す。
さて、旅行とは言えども、楽しんでばかりは居られない。
今日一晩を越したら、明日はまた、心置き無く観光を楽しめるのだから。
たった一晩。
頑張ろう。
部屋の戸締まりをして、また世間話の続きを交えつつ、大広間へ向かった。