羊かぶり☆ベイベー
すると、ユウくんは覚束無い足取りで、大広間から出ていった。
その一部始終を見ていた私は、心配になり、部長に断りを一言入れて、部屋を出る。
そんなに時間は経っていないと思ったのに、彼の姿は既に見えない。
どこへ行ったのだろう。
フラフラして、危なっかしい雰囲気だった。
きっと、かなり酔っているに違いない。
廊下をしばらく歩くと、廊下の途中に机とソファが1つ置かれた、中庭が見える休憩スペースがあった。
そこに1人、人影が見える。
──居た。
そう思って、何故かしら壁に張り付き、隠れてしまった。
──大丈夫、頑張って介抱してみよう。
ゆっくり深呼吸をする。
息を吐き切ってからも、やっぱり体が動かない。
勇気を出さなければ。
足のつま先を改めて、彼の方へ向ける。
もう一度、深呼吸をする為に、息を吸い込もうとした瞬間。
突然、後ろから誰かに肩を掴まれた。
その力は、強い。
私しか居ないと思っていた廊下で起きた、突然の出来事に心臓が口から飛び出そうになる。
姿も見えないままなのに、攻撃的な意思がよく伝わってきた。
恐る恐る振り返ると、そこに居たのは私が最近、危惧している人物だった。
ユウくんに構う、営業部のあの女の子。
その表情は、恐ろしい程の真顔で。
更に、その真顔を一切崩さない彼女に、恐怖を抱いた。