羊かぶり☆ベイベー
「ああ。きっと、分からなかったんですね。あなたは彼に告白された時点で、断るべきだったこと」
目眩がした。
この子は何故、私が少し前まで考え、悩んでいたことを見事に言い当てたの。
そもそも、こんなにも、真っ向から突っ込んでこれる人が居るなんて。
まともに話したのは、たった今が初めてなのに。
初対面も同然なのに。
彼女は、やっぱり私とは真逆の女性だ。
私は本音を隠して、笑顔を取り繕って、多少なりとも気を遣ってみたけれど。
気を遣った?
何故? 気を遣う必要があった?
これだけ敵意を剥き出している彼女に、一体何の気を遣う必要があったというのだろう。
とうとう目の前が真っ暗になり、黙り込むしかなかった。
うつ向いて見えた私の足の横を、彼女の足が通り過ぎていく。
力なく振り返ると、彼女はユウくんのところまで行き、声を掛けていた。
彼女がソファの隣に腰掛け、介抱し始めたようだ。
そして、次の瞬間。
ユウくんは意識を朦朧とさせたまま、彼女に抱き着いた。
その時、彼の口から零れたのは。
「ん……みさお、ちゃ……」
確かに聞こえてきた、その声。
私は、動揺を隠せなかった。