羊かぶり☆ベイベー
「あ! みさおさん、ビール飲む? 」
「いえ、流石にそこまでしてもらうのは、悪いです」
「でも、酒、好きじゃんね?」
「そうですけど……」
私が口の中でモゴモゴしている間に、いつの間にやら、私の目の前、卓上にトンッとビール缶が置かれる。
「ん? ちゃんと冷蔵庫で冷やしてあったよ」
「そ、そうじゃなくて。吾妻さん、お酒一滴も駄目なんじゃ……」
「うん。よく覚えてくれてたね、そんなこと。これは、みさおさんのところの経理部長さんが、バスの中でくれたの。ほんとに、もう、俺飲めませんって…………言ってないわ」
おどけて事情を話す吾妻さんが面白くて、ついつい笑ってしまう。
ふと改めて、吾妻さんの顔を見ると、柔らかく、優しい表情で居た。
思わず照れてしまい、目を逸らす。
彼は、そんな私に構うことなく、談話を続ける。
「そういえば、まだ壮の店の鉄板焼き、食べてくれてないよね」
「あ、そういえば。ちゃんと、食べます。食べたいとは思ってましたから。でも、それよりもカクテルが美味しくて……」
そういえば、ここ最近は仕事、ユウくんのことで忙しくしており、店長のお店に行く頻度も少なくなっていた。
それでも、おまかせカクテルの味は、どんなものが出ても毎回、美味で。
それらの味、舌触り等を思い出すと、うっとりしてしまう。
「本当、酒好きだねぇ。もっとおいで。壮、寂しがってるよ」
「ええ。私も店長に会いたい。また近々、行かせてもらいます」
私が心を弾ませて言うと、吾妻さんは少し不満そうにしている。
「どうか、しましたか?」
「別に~? 俺だって、仕事抜きにして、みさおさんと外で話したいと思っただけです」
「え? そんな……」