羊かぶり☆ベイベー
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正午。
約束通り、食堂のテーブルで汐里と向き合い、昼食をとっていた。
「で、観光内容は、どうだった? みさおからもらった案が通った訳だけど」
「かなり満喫できた。去年に比べて、とにかく楽しかった」
「それは、それは何より」
「夜の宴会も、盛り上がってたね。あんなに観客を惹き付けられるのは、もう才能だと思う」
「ちょっとー、褒めても何も出さないよー」
頬を赤くしながら、おどける汐里は可愛い。
照れながらも、嬉しそうに口元がニヤけているのが分かる。
すると、ニヤけ顔を引き摺ったまま、汐里が「そういえば」と続けた。
「宴会のとき、2人で抜け出してたじゃん。あの後、どこかに行ってたの?」
「抜け、出す?」
「とぼけちゃってー。大分前、この食堂で彼氏の話してたら『緊張する』『慣れない』って言って、悩んでたから」
「あ、ああ……」
「だから、宴会でフラフラしながら出ていく彼氏の後ろを、追う様に出ていったみさおを見て、ああ、上手くいってるんだぁ、って勝手に安心してたんだけど……違った?」
彼女の洞察力に驚いた。
まさか、あれ程の快活な司会をしながら、周りの様子まで把握する余裕があるとは。
天晴れという他無い。
「あの、その事なんだけど……」
「あら、ごめん。もしかしなくても、触れちゃいけない話題だった……?」
汐里は口元を隠し、ニヤけている。
非常に申し訳ないが、彼女の期待しているような内容の話は、一切出来ない。