羊かぶり☆ベイベー
「そ、その事なんだけど。汐里の言う通り、この前、話したとき、彼との接し方に悩んでて」
汐里は箸を置き、突然、辿々しく話し始めた私を心配そうに見つめる。
期待させてしまった彼女に、あまり重い雰囲気で返したくなくて、今の私に出来る精一杯の笑顔を作り出す。
「それで! あれからね、ちょっと心境の変化が、数え切れない程あってね……」
心配してくれる汐里に、つい焦ってしまう。
すると、彼女が苦笑しながら優しい口調で言った。
「見かけによらず、忙しい子」
その彼女の表情、台詞に、何故かしら照れ臭くなり、何かを言うのを躊躇ってしまいそうになる。
そこを振り絞って、声を押し出した。
「……宴会を抜け出して、彼を追ったのは間違いないよ」
「ふふ、やっぱり」
「だって、とにかく体調悪そうだったから」
「専務たちのお酌しつつ、かなり呑まされてたね」
「汐里、司会しながら、そこまで見てたの?」
「そりゃ、みさおの彼氏、見れるのレアだし。どんな人なのか、ずっと気になってたからね」
「別に、そんな」
「写真、見せてもらったこともないし。営業部って言ったら、ほとんど外回りだから社内でお目にかかることもないでしょ? で? その後、追い掛けていって、どうなったの?」
汐里は両手で両頬を包み、机に肘を乗せて、私との距離を僅かに詰める。
「う、うん。それでね。体調悪いなら、少しでも楽になるように、私に何か出来ることはないかなと思って」
「うん」
「追い掛けたには、追い掛けたんだけど……」
「うん」
「いろいろ、間に合わなくて。別の人が代わりに看病してくれてた」
「いろいろ?」
「そ、そう」
誰にでも覚られてしまいそうな私の誤魔化しに「ふーん」と文句有り気に、じっとこちらを見てくる。
「な、何?」
「それで、みさおのことだから、そのまま自分は関わらないように帰ったって、そういう感じ?」
図星だ。
何も言えない。