羊かぶり☆ベイベー
「すみません。あいつが余計な口を挟んで」
放心状態になっていた私に、店長が気遣ってくれる。
「悔しい……」
「差し障ったのなら、代わりに謝っておきます。すみませんでした」
「いえ、違うんです。それに代わりにとか、止めてください。店長も、吾妻さんも何も悪くないのに」
悔しい。
吾妻さんが言い残して行ったこと、全部正論だ。
確かに、妥協だった。
ユウくんとは、タイプが全く違うから。
はじめから、合わないと思っていたから。
飲み会で告白されたのも、罰ゲームか何かの遊びだったんじゃないかって。
あのとき、飲み会の席で突然、隣に座られて。
他愛もない世間話をしていて、偶然、沈黙が訪れたとき。
そのときに告白をされた。
小声で、だけど真っ直ぐな視線を向けられて。
不覚にも、ときめいてしまった。
あんなに舞い上がってしまったのは、何年ぶりだっただろう。
もしかしたら、学生以来だったのかもしれない。
あ、駄目だ。
走馬灯の様に、あのときの情景が浮かぶ。
しかも、泣けてきた。
店長の前なのに。
静かに涙だけが、つたう。