羊かぶり☆ベイベー



「すみません」

「だから、謝らないでって──」

「大事なお客様を泣かせてしまったので、あいつは十分悪いです」

「そんなことは……」

「あいつの前でも、そうやって泣いてやればいいんですよ」



店長の唐突な言葉に、驚きを隠せずにいた。

私のその分かりやすい反応に、店長の眉が少し動く。

数少ない店長の表情に、また新たな部分が付け足された。

多分、思い通りの私の反応に、面白がっている、そんな気がする。

店長の言った言葉の意味を考え込んでいる私に、店長がさらに付け加えた。



「あいつ、見ての通り、能天気なので。そうやって、素直に感情を出してやればいいんですよ」

「素直に……」



店長は頷く。



「あいつは、人の感情を読み解くのが得意で」

「今、流行りのメンタリストか、何かなんですか」

「近いかもしれませんね」

「え? でも、この前、うちの会社に営業しに来てましたよ」

「営業?」

「あれ? 違うんですか?」



店長が首を傾げた。

そして、何かを考えている様だ。



「カクテル、もう一杯いかがですか?」

「……いただきます」
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