羊かぶり☆ベイベー
「……苦っ!」
「アメール・ピコン・ハイボールです。アメールは苦いという意味です。確か、フランス語か何かだったかな」
「そ、そうですか」
でも、せっかく出してもらったのだから、楽しまなければ。
きっと店長も何か意図をして、これを選んで、出してくれたのだろうし。
心して、じっくり飲んでみる。
「ん、これもハーブっぽい?」
「気づける余裕が有るのは、カクテルよっぽどお好きなんですね」
「嗜む程度ですが……」
ほほほ、と誤魔化す。
正直、そこまで詳しくない。
むしろ好きなものを、好きなだけ飲んでいるだけ。
その中でも、このお店が断トツに美味しくて、ハマってしまっただけだ。
そんな、にわかの私に店長が尋ねる。
「それのカクテル言葉、ご存知ですか?」
「いえ、知りません。何ですか」
「"分かり合えたら"」
──分かり合えたら。
心の中で復唱してみる。
いつでも店長は、私やお客さんのことから連想して、カクテルを作ってくれる。
今回も、きっと私に合わせて考えてくれたはず。
「吾妻さんと、私が……?」
「それもありますが……」