羊かぶり☆ベイベー



店長は私が持つ「アメールなんとかかんとか」を指差す。



「もう、そんなに飲み進めてるじゃないですか」



言われて、グラスに目をやる。

グラスの中の紫は、既に半分くらいまで減っていた。



「あ……苦味に馴れてきたら、美味しく感じてきちゃって」

「つまり、乗り越えたんですね。その苦味を」

「はい。乗り越えちゃいましたね」

「じゃあ、あなたはもう大丈夫です」



はてなマークを飛ばす私に、店長が相変わらずの無表情で言った。



「今、抱えているその苦い想いも、きっと乗り越えられます」



ハッとした。



「簡単でなくとも、きっと」



人の感情を読み解けるのは、吾妻さんじゃなく、店長の方なんじゃないか。

そんな風に思う。



「"分かり合えたら" いいですね」

「ありがとうございます……」



なんて温かい空間なんだろう。

だから、私はここが好きだ。

また涙ぐんでいると、店長が1枚の名刺を私に手渡した。

そこに書かれた名前に、まず驚かされる。



「これって……」



そして、更にその左上に書かれた肩書きがあまりにも意外で、目を疑った。
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