羊かぶり☆ベイベー
声を掛けに行くとなると、鬱陶しいだろうから、ちょっと姿を見るだけ。
きっと忙しくしているから、邪魔しないように。
ちょっと前を通るだけ。
向かっていく最中は、胸が何故かしらざわつく。
私、こんなに怖がらなくてもいいのに。
少しずつ、少しずつ目的の場所が近付く。
「いいか、私。期待はしちゃダメ」
ソワソワして落ち着かない、私自身に小声で叱る。
扉は開いていた。
目的の場所を目前にして、深呼吸をする。
息をしっかり吐き切った、そのとき。
「──先輩、正気なんですか?」
目の前に迫る部屋、ユウくんの部署から女性の声が聞こえてきた。
恐る恐る覗き込む。
そこには、デスクのパソコンに齧り付くように向かうユウくんが居た。
少し角度を変えて覗くと、そのデスクに手を付き、距離をつめる女性の姿があった。
思わず、息を呑む。
──あの女の子、見たことある……。
確かに、見覚えがあった。
私は彼女の顔から、しばらく目が離せなくなっていた。
小柄な女の子。
膝下丈のフレアスカートをひらりと揺らす。
さらに、彼女はユウくんに迫っていく。