羊かぶり☆ベイベー



声を掛けに行くとなると、鬱陶しいだろうから、ちょっと姿を見るだけ。

きっと忙しくしているから、邪魔しないように。

ちょっと前を通るだけ。

向かっていく最中は、胸が何故かしらざわつく。

私、こんなに怖がらなくてもいいのに。

少しずつ、少しずつ目的の場所が近付く。



「いいか、私。期待はしちゃダメ」



ソワソワして落ち着かない、私自身に小声で叱る。

扉は開いていた。

目的の場所を目前にして、深呼吸をする。

息をしっかり吐き切った、そのとき。



「──先輩、正気なんですか?」



目の前に迫る部屋、ユウくんの部署から女性の声が聞こえてきた。

恐る恐る覗き込む。

そこには、デスクのパソコンに齧り付くように向かうユウくんが居た。

少し角度を変えて覗くと、そのデスクに手を付き、距離をつめる女性の姿があった。

思わず、息を呑む。

──あの女の子、見たことある……。

確かに、見覚えがあった。

私は彼女の顔から、しばらく目が離せなくなっていた。

小柄な女の子。

膝下丈のフレアスカートをひらりと揺らす。

さらに、彼女はユウくんに迫っていく。
< 67 / 252 >

この作品をシェア

pagetop