bitterlips
「ただ、これ吸いたくて」
彼女はそう言いながら、煙草の火を
足で揉み消す。
逆に俺は、火を着けたばかりの煙草をゆっくりと吸って煙を吐いた。
変な女だな。
単純に、俺はそう思った。
ライブではしゃいだ様子でもない。
でも、俺のことは知っているようだ。
なのに、素知らぬ顔して
煙草を吸っていたし
出待ちをしようとも思っていない。
こんな小さなライブハウスでは
マニアックなバンドしか
ライブしないようなもんだし
俺らだってまだまだ駆け出し。
と言うのかは分からないが
まだそんなに有名ではない。
