bitterlips
すると、開けたドアの向こうから
夜風と共に煙草の煙がふわりと入り込んできた。
前のバンドの奴か、と思い
勢いよく開けると
「…………あ」
「あ、さっきの……」
どう見てもまだ高校生くらいにしか見えない女が、煙草を指に挟めて立っていた。
「ごめん、急に開けて」
「別に……」
まだ1度も染めていないような
艶のある黒髪。
人形のように長いまつげは
瞬きする度に、少し膨らんだ涙袋を
覆い隠そうとしている。
俺は少し彼女を見つめると
すぐに目をライターの火に移した。
「誰かの出待ち?
だったらココには来ないけど」
くわえた煙草に火を着けながら、彼女を横目で見る。
依然、彼女は無表情で
煙草の煙を口からゆっくりと
吐き出していた。