愛と呼ぶには幼すぎる。
俺達は結局、その後も友達のままだった。
でも、頻繁に#依瑠__える__#の家に行くようになったり、どこか二人で遊びに出かけたり、係が無い昼休みや放課後も二人で図書室に行って本を読んだり、距離は少しずつ近づいていっているような気がしていた。
「ハル吉~今日放課後一緒に遊ぼ?♡テツも呼んでさぁ~」
「ごめんミコ、俺先約あるから。」
みたいな事が続いて、俺は完全にテツヤ達の一軍グループから外れたけど、テツヤは未だによく話しかけて来てくれる。
この前なんか、「早く深井さんと付き合わねーと、大変なことになる」と忠告された。
この時の俺には、何のことか全く理解できなかった。
これが、後に大事件となることなど、想像もしなかったのだ。
とある土曜日、俺は依瑠と学校付近で待ち合わせして、最近出来た美術館に行く約束をしていた。
いつも俺は時間ぴったりか少し後、依瑠はいつでも先に待っていた。
前の約束の時に違う場所で待っていてすれ違った事もあり、俺達は恋人に人気とかいうGPSアプリでお互いのスマホの位置を分かるようにした。
何かあった時しか開かない事。条件はそれだけ。
常に監視されるのは、お互いに嫌いだ。
俺はその日も、約束の時間ぴったりに待ち合わせ場所についた。
あたりを見渡したが、依瑠の姿はどこにも無い。
俺は、テツヤの忠告のこともあり、何か嫌な予感がして、初めてGPSアプリを開いた。
依瑠のスマホの位置情報は、廃工場を指していた。
まさかと思いつつ、俺は廃工場にダッシュした。
走るのなんて陸上部だった中学生以来で、高校生になってからは自主的な筋トレぐらいしかしてなかったから、すぐに息が切れる。
廃工場前に着き、入り口を探していると、中から叫び声が聞こえた。
「やだぁ!!!春來君!!!助けて!!」
普段大声なんて出さないけど、確かに依瑠の声だった。
しまっていたシャッターの小さな隙間に手を入れ持ち上げ中に入ると、大学生と思われる男達に押さえ付けられ、服を剥ぎ取られている依瑠の姿があった。
俺は、何も考えられなくなって、落ちていた鉄パイプを拾うと、大学生の頭を思いっきり殴った。
物凄い、血が出たと思う。
頭の中の血が沸騰しすぎて、何も覚えてないのだ。
俺は無我夢中で大学生3人組を殴り倒した。
依瑠は既に助かっていたが、俺は狂ったように主犯の男をパイプで殴る。
「もうやめて!!やめて、春來君、もういい…死んじゃう…」
依瑠の言葉に我に返ると、俺も血まみれで、その男も気絶していた。
俺は、人を殺したと思った。
依瑠が呼んだ救急車で、大学生3人は運ばれていった。
警察の事情聴取で、俺はこってり絞られたが、幸い大学生達は全員意識があり、自分達の悪事がバレたく無いから訴えないとのことでお咎め無しとなった。
俺が戦慄するのは、そのすぐ後だった。
警察から、大学生達が、
『深井エルって子を襲えば、ゲームの報酬で4千万ベリーくれるっていう書き込みが掲示板にあったんです。学校名と写真も載ってて、ビッチだとか色々書いてあったんで、そういう子なら大丈夫かなと思って。』
と供述していると教えられ、そのゲームの掲示板を見ると、書込み主のペンネームは “ミコりん”という人物だった。
俺は、ミコだと直感した。
その内容は、
『彼氏に変な虫がついて困ってるの。傳徳学校三年の深井エルとかいう子で、誰とでもすぐ寝るとかビッチとかって噂だから、みんなの力で追い払ってほしいな♡写真も載っけておきます。成功報酬は4千万ベリー!』
というものだった。その他にも、ミコが前に、
『ミコの彼氏、最近ミコと遊んでくれないの。なんか図書委員の子がたぶらかしてるみたいで、ミコ心配~』
等の書き込みがあり、俺は身震いした。
俺は怒りのままに、ミコにすぐ電話した。
『はい~ハル吉、何の用?もしかして遊びに誘ってくれるの?』
陽気なミコに、俺は余計に腹が立った。
「俺がいつ、お前の彼氏になった?」
俺の低く怒った声に、ミコは、え?と声を上擦らせる。
「お前がゲームサイトに書き込みしたせいで、依瑠が襲われたんだ!やっていいことと悪いこともわかんねぇのかよ!!もうお前と関わる気は無いし、これからあんなくだらない書き込みしたらお前を名誉毀損と暴行幇助で訴えるから。」
一方的に言いたいことだけ言って、電話を切って、連絡先を消した。
俺がキレてる間も、依瑠は震えながら俺の服の裾を掴んでいた。
俺と仲良くしたから依瑠をまた怖い目に合わせた。
そう思うと、自ずと選ぶべき道は見えた。
「依瑠は、俺といない方がいい。もう二人で遊びに出かけるのはやめよう。もう疲れた。」
本音なんかじゃなかったけど、俺は、それが依瑠の為に一番いいと信じて疑わなかった。
依瑠は、ずっと俯いたまま、うんともすんとも言わなかった。
月曜、依瑠は学校に来なかった。
ミコの話はどこからか広まり、ミコは完全に孤立した。
テツヤだけは、
「ミコのやったことは取り返しのつかない事やし、絶対にしたらいかん事やけど、ミコの気持ちも俺は分からんでもないわ」
と、少し擁護の姿勢を見せた。
火曜も、依瑠は学校に来なかった。
水曜、図書委員の係は俺一人だった。
木曜、金曜、その次の月曜も、依瑠は来なかった。
でも、頻繁に#依瑠__える__#の家に行くようになったり、どこか二人で遊びに出かけたり、係が無い昼休みや放課後も二人で図書室に行って本を読んだり、距離は少しずつ近づいていっているような気がしていた。
「ハル吉~今日放課後一緒に遊ぼ?♡テツも呼んでさぁ~」
「ごめんミコ、俺先約あるから。」
みたいな事が続いて、俺は完全にテツヤ達の一軍グループから外れたけど、テツヤは未だによく話しかけて来てくれる。
この前なんか、「早く深井さんと付き合わねーと、大変なことになる」と忠告された。
この時の俺には、何のことか全く理解できなかった。
これが、後に大事件となることなど、想像もしなかったのだ。
とある土曜日、俺は依瑠と学校付近で待ち合わせして、最近出来た美術館に行く約束をしていた。
いつも俺は時間ぴったりか少し後、依瑠はいつでも先に待っていた。
前の約束の時に違う場所で待っていてすれ違った事もあり、俺達は恋人に人気とかいうGPSアプリでお互いのスマホの位置を分かるようにした。
何かあった時しか開かない事。条件はそれだけ。
常に監視されるのは、お互いに嫌いだ。
俺はその日も、約束の時間ぴったりに待ち合わせ場所についた。
あたりを見渡したが、依瑠の姿はどこにも無い。
俺は、テツヤの忠告のこともあり、何か嫌な予感がして、初めてGPSアプリを開いた。
依瑠のスマホの位置情報は、廃工場を指していた。
まさかと思いつつ、俺は廃工場にダッシュした。
走るのなんて陸上部だった中学生以来で、高校生になってからは自主的な筋トレぐらいしかしてなかったから、すぐに息が切れる。
廃工場前に着き、入り口を探していると、中から叫び声が聞こえた。
「やだぁ!!!春來君!!!助けて!!」
普段大声なんて出さないけど、確かに依瑠の声だった。
しまっていたシャッターの小さな隙間に手を入れ持ち上げ中に入ると、大学生と思われる男達に押さえ付けられ、服を剥ぎ取られている依瑠の姿があった。
俺は、何も考えられなくなって、落ちていた鉄パイプを拾うと、大学生の頭を思いっきり殴った。
物凄い、血が出たと思う。
頭の中の血が沸騰しすぎて、何も覚えてないのだ。
俺は無我夢中で大学生3人組を殴り倒した。
依瑠は既に助かっていたが、俺は狂ったように主犯の男をパイプで殴る。
「もうやめて!!やめて、春來君、もういい…死んじゃう…」
依瑠の言葉に我に返ると、俺も血まみれで、その男も気絶していた。
俺は、人を殺したと思った。
依瑠が呼んだ救急車で、大学生3人は運ばれていった。
警察の事情聴取で、俺はこってり絞られたが、幸い大学生達は全員意識があり、自分達の悪事がバレたく無いから訴えないとのことでお咎め無しとなった。
俺が戦慄するのは、そのすぐ後だった。
警察から、大学生達が、
『深井エルって子を襲えば、ゲームの報酬で4千万ベリーくれるっていう書き込みが掲示板にあったんです。学校名と写真も載ってて、ビッチだとか色々書いてあったんで、そういう子なら大丈夫かなと思って。』
と供述していると教えられ、そのゲームの掲示板を見ると、書込み主のペンネームは “ミコりん”という人物だった。
俺は、ミコだと直感した。
その内容は、
『彼氏に変な虫がついて困ってるの。傳徳学校三年の深井エルとかいう子で、誰とでもすぐ寝るとかビッチとかって噂だから、みんなの力で追い払ってほしいな♡写真も載っけておきます。成功報酬は4千万ベリー!』
というものだった。その他にも、ミコが前に、
『ミコの彼氏、最近ミコと遊んでくれないの。なんか図書委員の子がたぶらかしてるみたいで、ミコ心配~』
等の書き込みがあり、俺は身震いした。
俺は怒りのままに、ミコにすぐ電話した。
『はい~ハル吉、何の用?もしかして遊びに誘ってくれるの?』
陽気なミコに、俺は余計に腹が立った。
「俺がいつ、お前の彼氏になった?」
俺の低く怒った声に、ミコは、え?と声を上擦らせる。
「お前がゲームサイトに書き込みしたせいで、依瑠が襲われたんだ!やっていいことと悪いこともわかんねぇのかよ!!もうお前と関わる気は無いし、これからあんなくだらない書き込みしたらお前を名誉毀損と暴行幇助で訴えるから。」
一方的に言いたいことだけ言って、電話を切って、連絡先を消した。
俺がキレてる間も、依瑠は震えながら俺の服の裾を掴んでいた。
俺と仲良くしたから依瑠をまた怖い目に合わせた。
そう思うと、自ずと選ぶべき道は見えた。
「依瑠は、俺といない方がいい。もう二人で遊びに出かけるのはやめよう。もう疲れた。」
本音なんかじゃなかったけど、俺は、それが依瑠の為に一番いいと信じて疑わなかった。
依瑠は、ずっと俯いたまま、うんともすんとも言わなかった。
月曜、依瑠は学校に来なかった。
ミコの話はどこからか広まり、ミコは完全に孤立した。
テツヤだけは、
「ミコのやったことは取り返しのつかない事やし、絶対にしたらいかん事やけど、ミコの気持ちも俺は分からんでもないわ」
と、少し擁護の姿勢を見せた。
火曜も、依瑠は学校に来なかった。
水曜、図書委員の係は俺一人だった。
木曜、金曜、その次の月曜も、依瑠は来なかった。