もう一度〜あなたしか見えない〜
私は独身時代は親元だったし、料理が好きだったこともあって、コンビニ弁当とはほとんど無縁で過ごして来た。


初めてそれを口にした時、あまりのそのガサツな味付けに驚いた。身体を壊す為の食物かと思った。それが今や、週に何食、それを食べているだろう。お酒だって、以前は付き合い程度しか飲めなかったのに、今では晩酌代わりの缶ビールは欠かせなくなった。


仕事上では、自分で言うのも何だが、結構イケてるキャリアウーマンのつもり。だけど私生活ははっきり言ってボロボロだ。休日だって、ほとんど家に閉じこもっている。


こんなことじゃいけない、なんてことはわかり過ぎてるくらいにわかっている。だけど私はあの人が忘れられない。私の時間はあの人と別れた日から、結局止まったままなのだ。


あの人が、もし今、私の前に現れて、もう一度やり直そうと言ってくれたとしたら、私は一もニもなく、あの人の胸に飛び込んで行く。一生尽くして欲しいと言われれば、明日にでも会社を辞めて、家であの人の帰りを待つ日々を送るだろう。


そんなあり得ないことを夢想してしまうことも稀ではない。あの人を探そうと思ったことも、何度もあるが、あの優しい人にはもう新しい奥さんか彼女がいるに違いない。これ以上、あの人に迷惑はかけられない。その程度の理性はまだ働く。


こんな非生産的な日々を送っている私。仕事がなかったら、私はとうに壊れてしまっていただろう。


これがあの人の復讐なのかもしれない。あの人を忘れられず、一歩も進めず、もがき苦しむ日々を私が送ることが・・・。
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