もう一度〜あなたしか見えない〜
急に携帯が鳴り出した。見ると、サークル仲間の内で私を見捨てなかった数少ない子の1人からだった。


私が出ると「久しぶり〜」と明るい声で、切り出して来た彼女は、今度久しぶりにサークル仲間が集まるので、来ないかと誘ってくれた。


彼女としては、気を遣って、私を引っ張り出そうとしてくれてるのだろうが、今更そんな所へ、ノコノコ出ていっても、完全アウェーの立場に立たされるのは目に見えてるし、第一、あの人と会う可能性すらある。


会いたいという気持ちは強い一方で、会えない、今更どの面下げて、あの人の前に出ていけるのかという思いは、それ以上に強い。


せっかく誘ってくれたのにゴメンね、みんなによろしくと繕うと、適当なところで電話を切った。


フッと1つため息をついた私は携帯を置こうとしたが、思いついて、プライベートな着信はいつ以来だろうなんて、つまらぬ履歴チェックを始めた。


(あれ?)


すると、今日の夕方に公衆電話からの着信があったことに気付いた。時間的にまだ勤務中だったし、何より公衆電話からの着信は拒否設定にしてあるから、気付くはずもなかったが、珍しいこともあるものだと思った。


ところが、次の日もその次の日も、公衆電話からの着信が残っていた。日に1回だったそれは、2回、3回とその数を増やしていた。


これはさすがに偶然でも間違い電話でもなさそうだ。その日も、着信に気づいた私が少々薄気味悪さを感じながら、会社の通用口を出た時だった。
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