もう一度〜あなたしか見えない〜
エピローグ
「パパ~、ママ~。」


2歳になった娘が、私達に手を振っている。同じような年頃の子供たちに混じって、すべり台に興じている娘。穏やかな日曜日の午前中、私達は近くの公園に来ている。


私の呼び掛けに答えてくれたかのように、元気一杯の産声を上げて、私達を感涙に咽ばせてくれた愛の結晶は、ちょっとおしゃまで、愛くるしい我が家の大切なお姫様として、日々私達に笑顔を与えてくれている。


そんな姫を微笑ましく見守っていた私達だったけど、突然夫の携帯が鳴った。


「はい、もしもし。」


出た夫の表情は、たちまちビジネスマンの顔に変わる。5分近くいろいろな話をしていた夫の表情はずっと厳しかったけど、通話を終えた途端、優しい夫とパパの表情に戻った。


「大変だね、日曜なのに。」


「今の上司は心配性でね。日曜のこの時間にジタバタしても始まらないのにな。」


苦笑いを浮かべる夫。でも、その姿は充実感にあふれている。


夫は最初の会社に戻ることが出来た。もう1度作り直す、そう誓い合った私達の第一歩として、夫はかつての同僚、私が偶然を装って話を聞いた、あの同期の人に、挨拶と相談を兼ねて、会いに行った。


突然現れた夫に、驚いたその人は、でも大歓迎してくれたそうで、私達の復縁を聞くと、我が事のように喜んでくれたらしい。


一瞥以来の話をし、どんな伝手でもいいから、何か仕事の当てはないかと尋ねる夫に、その人は


「じゃ、ウチに戻ってくればいいじゃないか。」


と事もなげに言った。


「俺は後ろ足で砂をかけて、出て行った人間だ。そんな虫のいい話なんか、無理に決まってる。」


と尻込みする夫に


「バカだな。ヘッドハンティングなんて、俺達の業界じゃ、日常茶飯事じゃないか。それに、2年のブランクって言っても、理由は過酷勤務の代償の療養と、親の看護だろ。とにかく俺に任せとけ。」


なんて、力強く言う同僚。それでも半信半疑だった私達のもとに、翌日には元の会社から連絡が来た。夫の元上司が今、人事部にいて、やる気があるなら、とりあえず面接に来いとのお達しで、夫は取るものもとりあえず、会社に吹っ飛んで行った。


夫の人柄と能力を高く評価していたその元上司の推薦もあって、話はトントン拍子に進み、さすがに以前と同じ待遇という訳にはいかなかったけど、驚くくらいスムーズに、復職が決まって、現在に至る。


さすが我が夫、私は内心ちょっと鼻高々だった。
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