自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
聴いている令嬢たちの中には、三拍子のリズムにのって首を振っている人がいる。
目を閉じて水面に遊ぶ小鴨を想像しているのか、口元を綻ばせている人もいた。
弾いているうちに、失敗しないだろうかという不安は解消され、セシリア自身も楽しんでいたのだが……。
右端近くの白鍵を叩いたセシリアは、「え?」と戸惑いの声を漏らした。
第二楽章に入ると、高いソ音が楽譜に初めて登場する。
その鍵盤を正しく弾いたのに、耳に聞こえた音はソのフラットであった。
(この音だけ調律が狂っているわ。この後、何箇所も出てくる音なのに、どうしたらいいのかしら……?)
セシリアがソの鍵盤を弾くたびに、クスクスと笑い声が漏れる。
「今、間違えたわよね? ほら、また……」
「いつもお上手でいらっしゃるのに、今日はどうなさったのかしら?」
隣同士のヒソヒソとした会話は、セシリアの耳にも届いていた。
どうやら他の令嬢たちは、調律が狂っているとは気づかず、セシリアが間違えたと思っているようだ。
目を閉じて水面に遊ぶ小鴨を想像しているのか、口元を綻ばせている人もいた。
弾いているうちに、失敗しないだろうかという不安は解消され、セシリア自身も楽しんでいたのだが……。
右端近くの白鍵を叩いたセシリアは、「え?」と戸惑いの声を漏らした。
第二楽章に入ると、高いソ音が楽譜に初めて登場する。
その鍵盤を正しく弾いたのに、耳に聞こえた音はソのフラットであった。
(この音だけ調律が狂っているわ。この後、何箇所も出てくる音なのに、どうしたらいいのかしら……?)
セシリアがソの鍵盤を弾くたびに、クスクスと笑い声が漏れる。
「今、間違えたわよね? ほら、また……」
「いつもお上手でいらっしゃるのに、今日はどうなさったのかしら?」
隣同士のヒソヒソとした会話は、セシリアの耳にも届いていた。
どうやら他の令嬢たちは、調律が狂っているとは気づかず、セシリアが間違えたと思っているようだ。