自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
(見つかってしまった……)


立ちすくむセシリアに、クロードが足早に歩み寄る。

二歩の距離を置いて立ち止まった彼は、焦りを隠して微笑むと、誠実な声で問いかけてくる。


「セシリア様の涙を、見過ごすわけにはいきません。心配なのです。どうかわけをお聞かせください」


ドレスの胸元を両手で握りしめたセシリアは、首を横に振って拒否を示した。

話したところで破談にできるわけではないし、気持ちが軽くなるとも思えなかった。


しかしクロードは、諦めてくれない。

セシリアとの距離を一歩詰めると、優しい言葉で心を開かせようとしてくる。


「私はいつもセシリア様の味方です。あなたの力になりたい」


これまでのセシリアなら、喜びに胸を熱くし、頬を染めたことだろう。

けれども今は悲しみに蝕まれているため、少しも感謝できずに、恨み言をぶつけてしまう。


「クロードさんは、わたくしの味方ではありませんわ。力になるどころか、作戦の邪魔をしたんですもの……」

「作戦の邪魔? それは一体、どういうことでしょうか?」
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