自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
クロードから少し体を離して、その顔を仰ぎ見れば、彼も苦しげな目をしている。
(ああ、やっぱり困らせてしまったわ。ごめんなさい。でも、もうひとつだけ、わがままを言わせてほしいの。これで最後にしますから、どうか許して……)
心の中で謝ったセシリアは、ありったけの勇気を振り絞って「お願いがあります」と切り出した。
「わたくしに、口づけをください。せめてもの思い出に。婚約式が済めば、決して許されないことですけど、今なら、まだ……」
大胆な願いごとをしている自覚はあり、彼女の鼓動は振り切れんばかりである。
その恥ずかしさを我慢してでも、どうしても思い出が欲しかった。
胸の前で祈るように指を組み合わせた彼女は、顔を上げて目を閉じる。
耳まで真っ赤に染め、緊張に体を震わせて、唇の上に温もりが下りるのを待ち焦がれていたのだが……二十秒経っても、その時は訪れない。
失意の中で目を開ければ、クロードが深刻そうな顔をして、セシリアをじっと見つめていた。
「セシリア様、申し訳ございませんが、今はできません。少々、お時間をいただきたい」
「そう、ですか……」
(ああ、やっぱり困らせてしまったわ。ごめんなさい。でも、もうひとつだけ、わがままを言わせてほしいの。これで最後にしますから、どうか許して……)
心の中で謝ったセシリアは、ありったけの勇気を振り絞って「お願いがあります」と切り出した。
「わたくしに、口づけをください。せめてもの思い出に。婚約式が済めば、決して許されないことですけど、今なら、まだ……」
大胆な願いごとをしている自覚はあり、彼女の鼓動は振り切れんばかりである。
その恥ずかしさを我慢してでも、どうしても思い出が欲しかった。
胸の前で祈るように指を組み合わせた彼女は、顔を上げて目を閉じる。
耳まで真っ赤に染め、緊張に体を震わせて、唇の上に温もりが下りるのを待ち焦がれていたのだが……二十秒経っても、その時は訪れない。
失意の中で目を開ければ、クロードが深刻そうな顔をして、セシリアをじっと見つめていた。
「セシリア様、申し訳ございませんが、今はできません。少々、お時間をいただきたい」
「そう、ですか……」