自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
「ここを壊せば、きっと国王陛下に叱られます。まだ人の妻になるのは早いと言われて、縁談は流れるに違いありません。頑張りましょうー!」


笑顔のツルリーに励まされると、セシリアの心はまた前を向く。

(そうよね。ジャルダンには申し訳ないけれど、やらなければ好きでもない人と結婚させられてしまうのよ)


「もう、お止めしませんので、セシリア様もどうぞ心置きなく荒らしてください。私もいただいた金貨一枚分、きっちりと働きます。ぼやぼやしていたら夜が明けてしまいますよ。急ぎましょう」


今度はカメリーに急かされて、セシリアはついに、庭師への心配を吹っ切った。

(ジャルダンには、また来年頑張ってもらえばいいわ。彼はやり直しがきくけれど、私はそうじゃない。婚約は待ったなしの由々しき事態なのよ。だから一生懸命に、この庭を破壊するわ!)


大きく頷いたセシリアは、剪定バサミを持ってツゲの生垣の前に立つ。

緑の箱のような形に整えられたツゲの枝葉を、チョキチョキと切り始めた。

すると徐々に楽しくなって、口元に笑みが浮かぶ。
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