自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
それから四時間ほどが経ち、夜がすっかり明けて、新鮮な朝日が王城を優しく照らしている。

慣れない庭仕事に疲れ切ったセシリアたちは、この辺でいいだろうと切り上げて、一度、邸宅内に戻る。

手と顔を清め、土に汚れた服からレモンイエローのデイドレスに着替えたセシリアは、紅茶を一杯飲んでから、双子の侍女とともに再び外へ出た。


それは、庭を壊したのは自分だと、ジャルダンに告げるためである。

こっそりと悪事を働いて、犯人不明のままで終わらせては意味がない。

庭師に酷いことをした悪い娘だという噂が、父親の耳に入らなければ、破談にはしてもらえないからだ。


北棟の通用口から出て、少し歩いたセシリアたちは、庭を前にして呆然と立ち尽くしているジャルダンの後ろ姿を目にした。

彼の足元にはジョウロが転がっており、中の水がこぼれてしまっている。

おそらく審査員が来る前に、花に水やりをしようと考えたのではあるまいか。

そして、原型がわからぬほどに荒らされた庭を目の当たりにし、強いショックを受けた様子であった。
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