自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
予想していたこととはいえ、そんなジャルダンの背中を見れば、セシリアは胸に痛みを覚える。

けれど、心の中で詫びながらも、両手をグッと握りしめ、計画の仕上げに入るべく、背後から近づいた。

侍女たちも、黙ってセシリアについてくる。


庭師と三歩の距離を置いて足を止めたセシリアが、「おはようございます」と緊張した声をかければ、彼がゆっくりと振り向いた。

その顔は蒼白だが、悲しみや怒りは感じられない。

何が起きたのかわからないと言いたげに目はうつろで、王女の挨拶にも返事をすることができないでいた。


彼の受けた衝撃の大きさを察して、言葉に詰まるセシリアであったが、右隣に立つツルリーが手を握って励ましてくれる。

左隣のカメリーは、「仕上げをしなければ意味はありません」と背中を押してくれて、セシリアは深呼吸をして気持ちを固めると、庭師に悪事を暴露した。


「ジャルダンさん、あなたが品評会用に造った庭を、このようにしたのは、わたくしです」


すると彼は、驚きに目を見開いた。

信じられないと言いたげな顔をして、「セシリア様が? 本当でございますか?」と問いかけてくる。
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