自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
それで、今年が最初で最後のチャンスだと言っていたのかと、セシリアはようやく腑に落ちた思いでいた。

そして、きっとジャルダンが造った単純で面白みのない庭では、受賞を逃したであろうと推測する。

ということは、彼が王城庭師を辞めずにすみそうなのは、自分たちが荒らしたせいだということも理解した。


(でも、ジャルダンさんを助けようと思ってのことではなく、邪魔するつもりだったのよ。お礼を言われるのはおかしいわよね……)


感謝されたことで、居心地の悪さを感じたセシリアはうろたえる。

すると、それを察した様子のツルリーが耳元で囁いた。


「ここは私にお任せください。セシリア様が人助けしたなどという噂が広まらないように、庭師を言いくるめておきますから」


ツルリーの言う通り、受賞できたのはセシリアのおかげだと彼が言いふらせば、国王から与えられた課題をひとつクリアしたことになり、困った事態となる。


ジャルダンはまだ土下座したままで感謝感激の涙を流し、お礼を言い続けていた。

眉を下げてそれを受け止めていたセシリアであったが、「お願いね」とツルリーにこっそり返事をすれば、今度は右隣のカメリーが声を潜めずに話しだした。
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