自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
「うまく演技できていたかしら?」との問いかけに、ツルリーが指でOKサインを作り、はしゃいだ声で言う。


「バッチリです! 意地悪な感じがよく出ていたと思いますー!」


ツルリーは合格点を与えてくれたが、カメリーの採点は厳しい。


「六十点ですね。『わたくしに考えろと仰るの?』という台詞は、敬語になってしまったので減点です。それから……」


口調も、もう少し高飛車でわがままな感じが出せたらよかったと指摘を受けたセシリアは、素直に頷いた。


「次はもっと頑張る。コルドニエの主人が『もう無理です』と弱音を吐くくらいに困らせてみせるわ!」


両手を握りしめ、やる気をみなぎらせるセシリアは、麗しき騎士団長の姿を思い描いている。

クロードさんと離れたくない……そのひたむきな恋心が、彼女を奮い立たせるのであった。


それから四週間ほどが経つ。

ドラノワ公爵家でのサロンパーティーは八日後に迫っていたが、セシリアの靴は完成していない。

デザイン画を十回描き直しさせ、やっと許可を与えて製作に入らせたかと思えば、革の種類やステッチに難癖をつけ、挙げ句の果てには気が変わったから別のデザインに、と靴屋を困らせていた。
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