自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
「一生懸命に意地悪したつもりだったのに、どうしてこうなっちゃうのかしら……」


庭師ジャルダンの時も、悪事を働いたつもりが人助けの結果となってしまった。

今回も同じだと嘆息するセシリアを、侍女ふたりが慰めようとする。


「今回の件は、なかったことにしましょう」とカメリーが淡々とした声で言った。

「靴屋とのやり取りを誰にも見られていませんし、きっと国王陛下の耳にも入りません。仕切り直せばいいかと思われます」


「そ、そうよね。お父様に伝わらなければ、人助けの課題のふたつ目をクリアしたことにはならないわよね」


カメリーに同意したセシリアは、椅子の背もたれから体を離すと、グッと右手を握り締めた。

「わたくし、まだ諦めないわ。次のターゲットを探さなくちゃ!」


するとツルリーが隣で拍手して、嬉しそうに応援する。

「セシリア様、その意気ですよ。次は絶対に成功すると思います。また三人で頑張りましょー!」


双子に励まされたセシリアが、なんとか元気を取り戻したら、時刻は十六時半になろうとしていた。

侍女たちは、間もなくお茶の時間だと、準備のために先に応接室を出ていく。

青いパンプスを腕に抱いたセシリアも、侍女たちに遅れること数分してドアを開け、自室に戻ろうとした。

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