自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
廊下を進み、階段へ向かう。
高い位置にある、明かり取りの窓から差し込む光は茜色を帯び、白大理石の豪奢な階段を暖かな色に染めていた。
階段を上ろうと、一段目に足をかけたセシリアを、誰かが後ろから呼び止める。
「セシリア様」
低く響く聞き心地のよい声は、クロードのもの。
彼だとすぐに気づいたセシリアは、弾かれるように振り向いた。
黒い騎士服を纏った彼は、今日も麗しい。
思わず頬を熱くして、声をかけてもらえた喜びに胸を弾ませた彼女であったが、その笑顔はすぐにぎこちないものに変わる。
一歩の距離まで近づいて足を止めたクロードに、嬉しそうな顔で褒められたからである。
「靴屋の親子を救われたのですね。素晴らしい。さすがはセシリア様です」
ここ数日、クロードに監視されている気配はなかった。
王都に暗躍する悪党一味のアジトが割れたとのことで、騎士団長が陣頭指揮を執り、大規模な捕獲劇を繰り広げていたため多忙であったのだ。
それなのに、なぜクロードが靴屋との一件を知っているのか……。
動揺に心臓を波打たせるセシリアが、「どうして、そのことを……?」と問いかければ、彼はサラリと答える。
「私が任務を終え帰城したところ、城門前で靴屋の親子と鉢合わせたのです」
高い位置にある、明かり取りの窓から差し込む光は茜色を帯び、白大理石の豪奢な階段を暖かな色に染めていた。
階段を上ろうと、一段目に足をかけたセシリアを、誰かが後ろから呼び止める。
「セシリア様」
低く響く聞き心地のよい声は、クロードのもの。
彼だとすぐに気づいたセシリアは、弾かれるように振り向いた。
黒い騎士服を纏った彼は、今日も麗しい。
思わず頬を熱くして、声をかけてもらえた喜びに胸を弾ませた彼女であったが、その笑顔はすぐにぎこちないものに変わる。
一歩の距離まで近づいて足を止めたクロードに、嬉しそうな顔で褒められたからである。
「靴屋の親子を救われたのですね。素晴らしい。さすがはセシリア様です」
ここ数日、クロードに監視されている気配はなかった。
王都に暗躍する悪党一味のアジトが割れたとのことで、騎士団長が陣頭指揮を執り、大規模な捕獲劇を繰り広げていたため多忙であったのだ。
それなのに、なぜクロードが靴屋との一件を知っているのか……。
動揺に心臓を波打たせるセシリアが、「どうして、そのことを……?」と問いかければ、彼はサラリと答える。
「私が任務を終え帰城したところ、城門前で靴屋の親子と鉢合わせたのです」