初めまして、大好きな人



施設長の優しさが身に染みる。


じわりと涙が込み上げてきて、慌てて拭った。


「さあ、着いた。今日は疲れただろう。
 ゆっくり休みなさい」


施設に入って、そろりそろりと
二階にある自分の部屋に行った。


まずパジャマに着替える。


解放感に溢れた途端、大きなため息がこぼれた。


尚央を叩いた時の、彼の顔が頭から離れなかった。


悲しそうな、辛そうな目。


大人なのに今にも泣きだしそうな子供の目をしていた。


あんな顔するんだ。








日記を一通り書いて息をついた。


今日あったことを細かく書きだした。


腹が立ったこと、悲しかったこと。


全て尚央が悪い。


あんな甘い言葉で人を騙していたんだから。


明日は絶対に会いに行ってやらない。


今は尚央に会いたくない。


どんな顔をして会えばいいか分からないもん。


明日の私は覚えていないから、
会いに行ったらきっとまた、
尚央は甘い言葉を私にかけていくのだろう。


それが嫌で、日記には散々な書き方をした。


明日の私が、
尚央の嘘の優しさに惑わされないように。






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