初めまして、大好きな人



雅文がフォローを入れてくれる。


でもね、雅文。
それはフォローにならないよ。


笑えない。
寝ればすっきりするなんて。


私は寝たら全てを忘れてしまえるんだから。


それがいいことなのか悪いことなのか。
でも、私のために必死にフォローしてくれたっていう気持ちが
嬉しかったから不思議と怒りはなかった。


「ありがとうございます。親切にしていただいて。
 いつも波留ちゃんがお世話になってます」


「いえいえ、とんでもない。
 またご贔屓によろしくお願いします」


真理愛さんは笑顔でそう言うと、
私の背中をポンと軽く叩いてウインクした。


「またおいでね、波留ちゃん。また女子トークしましょう」


「あ、はい」


「じゃあ、私たちはこれで」


施設長に促され、席を立つ。
そのまま施設長に手を引かれ、私は店を出た。


「探したよ。こんなところに喫茶店があるなんて。
 いいお店だね」


施設長は穏やかにそう言った。
私は下を向いてうんと頷いた。


「波留ちゃん、ご飯は?」


「まだ食べてないけど、いらない」


「そうか。雄介くんが待っていたよ。
 もう眠くて寝ちゃったけど、
 波留ちゃんが来るまでご飯は食べないって言うから大変だった」


なんだか雄介にも、他の子にも悪いことをしたなと思う。


申し訳なくて何も言えないでいると、施設長は言った。


「好きに生きていい。だけど遅くなる前には帰ってきてほしい。
 みんな波留ちゃんの帰りを待っているし、
 私は何より、波留ちゃんのことが心配なんだよ」


「ごめんなさい」


「うん。それでいい。ちゃんと謝れる波留ちゃんはとてもいい子だ」





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