初めまして、大好きな人
*
私は絶叫した。
自分の声じゃないみたいな声を上げて、
涙をボロボロに流して、
そして拳を目の前にいる施設長の胸に叩きつけた。
一体何が起こっているの?
起きてすぐに、青いノートを目にした。
黒い字で「MEMORe:」と書かれたノートを。
中身も全部読んだし、施設長だという
目の前のおじさんからも詳しく聞いた。
でも、信じられるはずがない。
というか、信じたくないというのが、本音だった。
どうやら私は、「前向性健忘」という病気を患ったみたいだ。
簡単に言えば記憶障害の一つで、
事故を起こしてからの記憶が保たれなくなるという病気らしい。
現に私は、あの夏の記憶以来のことを覚えていない。
昨日何をしたのか、何を食べたのかさえ思い出せなかった。
これは本当のこと?
施設長は黙って微笑むと、私の頭を撫でてくれた。
ハンカチで私の涙を鼻水もろとも拭いてくれる。
その優しさが妙に心に染みて、私はまた涙を溢れさせた。
「落ち着いたかい?」
しばらく椅子に座っていたら、
施設長が笑いかけてくれた。
ゆるゆると頷くと
そうか、と言って、施設長は立ち上がった。
ポケットから千円札を取り出して、
私の手の中に押し込んだ。
「今日も、喫茶店に行くといい。
そこでのんびりしてくるんだ」