初めまして、大好きな人






私は絶叫した。


自分の声じゃないみたいな声を上げて、
涙をボロボロに流して、
そして拳を目の前にいる施設長の胸に叩きつけた。


一体何が起こっているの?


起きてすぐに、青いノートを目にした。


黒い字で「MEMORe:」と書かれたノートを。


中身も全部読んだし、施設長だという
目の前のおじさんからも詳しく聞いた。


でも、信じられるはずがない。
というか、信じたくないというのが、本音だった。


どうやら私は、「前向性健忘」という病気を患ったみたいだ。


簡単に言えば記憶障害の一つで、
事故を起こしてからの記憶が保たれなくなるという病気らしい。


現に私は、あの夏の記憶以来のことを覚えていない。


昨日何をしたのか、何を食べたのかさえ思い出せなかった。


これは本当のこと?


施設長は黙って微笑むと、私の頭を撫でてくれた。


ハンカチで私の涙を鼻水もろとも拭いてくれる。


その優しさが妙に心に染みて、私はまた涙を溢れさせた。


「落ち着いたかい?」


しばらく椅子に座っていたら、
施設長が笑いかけてくれた。


ゆるゆると頷くと
そうか、と言って、施設長は立ち上がった。


ポケットから千円札を取り出して、
私の手の中に押し込んだ。


「今日も、喫茶店に行くといい。
 そこでのんびりしてくるんだ」




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