初めまして、大好きな人



プラネタリウムの上映が終わり、館内が明るくなる。


潤んだ眸を隠すために前髪で顔を隠した。


尚央は大きく伸びをして欠伸を一つした。


眠かったのかな。それなのに私を連れてきてくれたのかな。
申し訳なさと嬉しさが混じりあう。


「出ようか」


「うん」


尚央は立ち上がると、
私に向かって手を差し出した。


その手を取って立ち上がると、
尚央は私の手を引いて歩き出した。


「しりとりでもするか?」


「ええっ?」


「んー。りんご。ご」


「ご、ご、ごま?」


「まーまー、マスク」


「く、くるみ」


「みーみー、みるく」


「また、く?」


「く」


突然始めたしりとりが意外と楽しいと思えた。


尚央は何度も同じのばっかりで返してくるから
そのうち何も思いつかなくなって、
そうかと思えばヒントを出してくれて。


私が答えられると今度は別な文字で攻めてくる。
恐るべし大学生。
頭がいいとは思っていたけどここまでとは思わなかった。


しりとりに気を取られながら歩いていると、
尚央がある場所で立ち止まった。


しりとりの続きを考えていた私は
最初気づかなかったけれど、
ずっと尚央が立ち止まっているから気になって、
視線を尚央に向けた。


「尚央。どうしたの?ここ……」


尚央が見ている方を向いて、
私は驚きのあまり言葉を失った。


そこは私の元の家があった場所で、
日記にはもう入れなくなったって書いてあったはず。


それなのに、尚央は玄関前に立っていて、
扉を開けようとしている。


「な、に……?」


「おいで」


尚央が優しく私の手を引く。


私はつられて家の前に立った。


尚央が鍵を開けてドアを開く。
そして私を促して中に入った。


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