初めまして、大好きな人
お店を出て少し歩く。
すると駐車場が見えてきて、
尚央は黒い軽自動車の前で立ち止まった。
私を助手席に乗せると、
自分も運転席へと乗り込む。
車の中は煙草の匂いで充満していた。
エンジンをかけると、洋楽が流れてきた。
ああそうか、この人は洋楽が好きなんだっけ。
何曲か曲のタイトルが日記に書いてあったような。
ノートを確認するとバッチリ書いてあって、
画面に表示された曲名と一致して嬉しくなった。
この曲、なかなかいい曲だなぁ。
好きになりそう。
尚央は車を走らせると静かに歌い始めた。
癖なのかな。こうして歌うのは。
それが上手くて、妙に心地よかった。
尚央の歌を聴きながら窓の外を眺めていると、お店に着いた。
車を降りると尚央が私の手を引く。
中に入ると沢山のDVDが並んでいた。
昔お父さんとよく来ていたから懐かしい。
ちょっとだけ泣きそうになって、慌てて頭を振った。
ノートに書かれている尚央の言葉を思い浮かべて、
なんとか気持ちを落ち着かせる。
大丈夫。寂しくなったりしない。
私には、尚央がついていてくれる。
そうでしょう?
「波留。何が観たい?」
「えっと、んー」
沢山あるDVDを眺めて考える。
アニメもいいけど、それだと尚央が退屈しちゃう。
怖いのを観る勇気はないし、
バラエティって気分でもない。
ここはやっぱり恋愛映画かな。