恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

たしかさっき陽子は不動産会社だと言っていたけれど。

梓が尋ねると、遠藤は胸ポケットから名刺を一枚取り出した。
受け取って見てみると、そこには『遠藤不動産』とある。

たしか式場建築の施主であるシュプリームウエディングに土地を斡旋したのがそうだったか。
あのパーティーは間接的にかかわりのある会社も招待していたため、遠藤不動産も招かれていたのだろう。

ただ、遠藤の顔自体は覚えがない。


「ごめんなさい、記憶にないんです」
「トイレの場所を聞かれたことは?」
「えっ、あぁ、あのときの」


そう言われて梓はようやく思い出した。
螺旋階段を一緒に上がって案内した招待客がいたが、その男性だったのか。


「思い出していただけたようですね」
「はい。あのときは大変失礼いたしました」


二度目にトイレの前で会ったときに声をかけられたが、梓は一樹にさらわれるようにしてその場を立ち去る事態になり、それきりだ。

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