恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「婚約者なら当然じゃない?」
「ですが、それはお見合いパーティを断るためで」


しかも〝ふり〟だ。あの場限りの嘘にほかならない。


「それが首尾よくいったのは梓のおかげだよ。ありがとう」
「あ、いえ、どういたしまして」


一樹ににこやかに微笑まれ、梓も丁寧に返す。が、今はそうじゃない。


「ではなくてですね、お見合いパーティーがなくなったのですから、もう婚約者のふりはしなくてもよろしいのではないでしょうか」
「梓は三島の怖さを知らないな」
「……はい?」


友里恵の怖さとはいったいなにか。

(さっきの形相はたしかに怖いものがあったけど……)

吊り上がった目、風によって巻き上げられた髪は鬼の角さながら。梓は思い出して身震いを覚えた。


「さっきので、三島の目を欺けたとは思えない」
「そうでしょうか……?」

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