チョコレートは恋に等しい
「香織、マジでなんか反応して。振られたのかすらわかんなくて困る」
「あっ、ごめん! その……よろしくお願いします!」
焦ってそう返すと、谷はまた微妙な顔をする。
あー、だよなぁとか一人で呟いたかと思うと、今までこちらを向いて止まっていた状態から、前を向いて歩き始めた。
「谷?」
私も谷に合わせて歩き始めると、谷が私の左手を握った。
「まぁ、その、なんだ……これから香織に好きになってもらえるように頑張るからよろしく」
ん……あれ?
もしかして谷は私が谷を好きだって気づいてない?
訂正しよう、私も好きだって伝えなきゃ。
「ね、ねぇ谷!」
「じゃあご飯でも食べに行くか!」
ちょうど谷の声と被って私の呼びかけがかき消される。
谷は私が呼びかけたことに気が付かない。
どうやらこの恋はやはりビターチョコレートかもしれない。
なんならベトナム産チョコレートのような酸味すら感じる。
ミルクチョコレートのように甘い恋になるのはまだまだ先かもしれない。
終わり
