クールな西園寺くんと、婚約したら。
「馬鹿だな。犠牲なんかじゃない」


「え?」


「考えてもみろよ。俺たちは大学に行きたいなんて、とてもじゃないけど言い出せないだろ?奨学金借りてまで大学行ったってお父さん達に楽させてやる余裕が出来るのはずっと先だ」



確かに、大学に行きたいなんて言えない。
だから、自分の意思で高校卒業と同時に働く道を選ぶつもりだった。


まさか、拓斗もそのつもりだったなんて思わなかったけど。



「でも、高校卒業して働いたからって、お父さんたちに楽させてやれるわけじゃないだろ?」


「……それは、確かにそうだけど」


「つまり、姉ちゃんが御曹司と婚約するのがお父さんとお母さんに今まで育ててもらった恩返しをするには絶好の機会ってわけだ」



"ついでに、俺も助かる"なんて、調子のいいことを言う拓斗に


さっきまでの大人な発言はどこに行ったのかとため息を零す。



……でも、拓斗の言う通りかもしれない。


特に好きな人がいるわけでもないし、これから先素敵な人と巡り会える予感もしない。


今ここで私が腹を括ってさえしまえば、お父さんは大企業の社員になって、お母さんは夢の専業主婦。


拓斗も安心して高校に通えて、もしかしたら大学も夢じゃないかもしれない?



私が御曹司に上手く気に入られることが出来さえすれば……西村家の未来は安泰?

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