堅物社長にグイグイ迫られてます
二人の会話をこっそりと聞いていた私は自分の頭の中を一度整理させる。

とりあえず御子柴さんには恋人がいないってことでいいのかな?

そのことにホッとしている自分がいる。いや、御子柴さんに恋人がいないことに安堵したわけじゃなくて、御子柴さんの家から出ていかなくていいことに安堵しただけだ。

御子柴さんが言葉を続ける。

「俺は見合いなんてする気はないし、ましてや親父の決めた相手と結婚する気なんて更々ない。だからはっきりと断ったら、もしかして他に恋人でもいるのか、と親父に聞かれた」

「いないでしょ」

「まぁそうなんだが。とっさに、いる、と嘘をついてしまった」

そこで御子柴さんはデスクに穴でも空くんじゃないかと思うような深いため息を落とした。そんな御子柴さんに対して佐原さんが呆れたように尋ねる。

「どうしてまたそんな嘘を?」

「もちろん見合いを断るために決まってるだろ。恋人がいるなら諦めてくれると思ったが、しかし親父相手にそう簡単にはうまくいかなくて。恋人をパーティーへ連れてこいと言われた。ちょうどいい機会だから役員やお偉いさんたちの前で紹介しろ、と」
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