堅物社長にグイグイ迫られてます
「それでもう一度事務所に戻って仕事でもしようと思ったら、雨でずぶ濡れ状態のお前がいたってわけだ」

そうだったんだ。だから一度は帰宅したはずの御子柴さんが再び事務所に戻ってきたんだ。

「それよりもお前はあのとき俺が事務所に戻らなかったらどうするつもりだったんだ。家を飛び出してきたはいいがなにも持ってなかったんだろ」

御子柴さんがちらりと私に視線を向ける。

「そうですよね。私、どうするつもりだったんでしょう……」

俊君の浮気現場を見てしまったことがショックでアパートから着のみ着のまま飛び出した。結果的に御子柴さんに拾ってもらえたから良かったものの、最悪は雨の中を野宿しかなかったかもしれない。

「御子柴さんが来てくれてよかったです」

ありがとうございます、と改めて感謝の気持ちを伝えて御子柴さんを見上げて笑いかけると、私を見下ろしていた御子柴さんの目が一瞬大きく見開かれるのが分かった。
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