堅物社長にグイグイ迫られてます
「もしかして御子柴さん。このシュークリーム私のために買ってきてくれたんですか?」

キッチンにいる御子柴さんに声を掛けるけれど返事がない。聞こえているはずなのに、彼は飲み終わったグラスをシンクでゆすいでいる。水を流すジャーという音だけが静かに響く。しばらくして濡れた手をタオルで拭きながら御子紫さんがボソッと呟く。

「佐原に言われたんだ。お前がそこのシュークリームを食べたがっていたから買って帰ればきっと喜んでもらえるって」

「え?」

ということはやっぱり私のために二つも買ってきてくれたってこと?なんだか胸がじんわりと熱くなっていく。

「ありがとうございます御子柴さん。私、今すごく嬉しいです」

食べてみたかったシュークリームを食べられたこともそうだけど、それよりも普段は愛想の欠片もない御子柴さんが私のためにわざわざ買ってきてくれたことがとても嬉しかった。

「残りの一つも明日大切に食べます」

シュークリームの入った箱を抱き締めながらそう言うと、普段は真一文字にきつく結ばれていることが多い御子柴さんの唇の口角がわずかに上がった。

「大げさだな、お前」

御子柴さんが笑った。

それに私は思わず見惚れてしまう。かっこいいとかそういうんじゃなくて感動だ。普段は仏頂面のあの御子柴さんが笑ったんだから。
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