堅物社長にグイグイ迫られてます
私は建築中の立派な家を見上げながら、隣の御子柴さんに声を掛ける。

「御子柴さんの仕事って改めて考えるとすごいですよね」

「何が?」

「だって、一番初めは白い用紙に線だけで描かれていたものが、実際に今はこんなに大きなカタチになって目の前にあるんですよ」

それってとてもすごいことだと思う。

「それにこの建物だけじゃなくて御子柴さんが今まで設計してきたたくさんの建物はこれからもずっと残り続けるんですよ。ちょっと例えが悪いですけど、もしもこの先御子柴さんが死んでしまっても御子柴さんがデザインした建物は残っている。これってとてもすごいことだと思いませんか」

私は隣の御子柴さんを振り返った。けれど反応がなにもない。御子柴さんは私へ視線を送ったまますっかり黙ってしまっている。

もしかして私また何か変なこと言ったかな……。

一瞬そう思って不安になったけれど、どうやらそうではなかったらしい。しばらくするといつもは固く結ばれている御子柴さんの唇がフッと小さな笑みをこぼした。

「俺が死んでもずっと残る、か。自分が設計した建物のことをそんな風に思ったことはなかったが確かにそうかもしれないな」

そう言うと、御子柴さんの手がふと私の方へと伸びてくる。そのままポンと私の頭に手を乗せると、くしゃっと優しく髪を撫でながら御子紫さんが口を開く。
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