堅物社長にグイグイ迫られてます
一方の私は口をポカンと開けたままその場に固まってしまう。

惚れてる女って誰のこと?

まさか私…………?

それに気が付いた瞬間かぁっと体中が熱くなり、心臓がドキドキと早く動き出す。

いや、でももしかしたら私の聞き間違いかもしれない。それに御子柴さんが私に惚れるなんてありえない。絶対にありえない。

「ほら、そろそろ帰るぞ。俺の傘に入ってくんだろ」

御子柴さんが早々と席を立ち歩き出す。

「あ、待ってください。御子柴さん」

まだドキドキしている心臓を落ち着けながら、置いて行かれないように私は御子柴さんのあとを慌てて追いかけた。

その日の夜、御子柴さんの自宅マンションへ戻った私はさっそくスマホの待受を変えた。俊君とのツーショット写真はアルバムからデータごと消した。その他の俊君が写っている写真も全て。そうしたら少しだけ気分がすっきりとして前に向けた気がする。

佐原さんが言っていたような新しい恋はまだきっとできないかもしれないけれど、それでもまたいつか誰かを好きになれたらいいなと思う。

そのときふと御子柴さんの顔が思い浮かんで、私は頭をぶんぶんと横に大きく振った。

御子紫さんと恋なんてありえない。こんな私が御子柴さんに釣り合うとは思わないから。


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