堅物社長にグイグイ迫られてます
しゅんとしながらもエビチャーハンを食べ続けていた私におじさんが声を掛ける。

「雛子ちゃんが男性を連れて店に来たから俺はてっきり雛子ちゃんの彼氏だと思ってたんだが。えっと、名前はたしか俊君だったか?」

「――ぶふっ」

突然おじさんの口から‶俊君〟という名前が出て来たのでつい動揺してしまい食べていたチャーハンを口から少し噴き出してしまった。

その先には御子柴さんが座っていて、分かりやすいくらいのイラッとした表情を見せている。

「なにやってんだ、お前」

「す、すみません」

ふきんで慌てて台をふく。その光景におじさんはまた大声で笑い出す。って、笑っている場合じいよおじさん。

ちなみにおじさんには私に‶俊君〟という名前の彼氏がいて同棲していることを話したことがあるので、俊君の存在自体は知っている。いつかこの店に俊君を連れて来ようと思っていたけれど、それが実現する前に私たちは別れてしまった。

そういえばおじさんには私が俊君と別れたことをまだ話していなかった。

俊君のことは吹っ切れたとはいえ突然話題に上るとまだ少しだけ動揺してしまう。

「どうした雛子ちゃん?」

台ふきを手に持ったまま言葉を失って黙りこんでしまった私を不思議に思ったのか、おじさんが声を掛けてくる。

「俊君とは別れました」

ぽそっと小さな声でそう告げると、よく聞こえなかったのかおじさんが「ん?」と聞き返してくる。私はさっきより少しだけ声のボリュームを上げた。
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