堅物社長にグイグイ迫られてます
やっぱり汐里の言っていた通りだった。

俊君は浮気をしていたんだ―――しかも私と一緒に暮らすこの家で堂々と。

「雛子、あの、えっとさ……」

上半身裸でパンツ一枚だけを身に付けた俊君がベッドからそろそろと降りてくる。すると、その動きで隣で眠っていた女性も目を覚ましたようだ。

「俊太、どうしたの?」

さらっとした黒髪の女性は俊君を見たあと、彼の様子がおかしいことに気が付いたのか、私の方へゆっくりと視線を向ける。そして特に驚くこともせず、一瞬で事の状況を飲み込んだのかあっさりと告げた。

「あっ、彼女帰ってきちゃったんだ」

瞬間、私はもうこの場にいるのが限界になった。

すぐにでもこの部屋を出て行きたくて、玄関へ向かって走りだそうとしたけれど―――――

「いたっ」

先ほど床に落としてしまった肉まん入りのコンビニ袋に足が滑ってしまい、バランスを崩した私はドスンという鈍い音と共に見事に顔から倒れ込んでしまった。

どうして私はこんなときまでドジなんだろう。
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