堅物社長にグイグイ迫られてます
「それで、今のお前の全財産はいくらだ」

「えっと、十万……あ、いや、正確にはそんなにもないかも」

ボソボソと小さな声で正直に答えると、御子柴さんは呆れたように軽く息を吐く。

「それだけか……。まぁ探せばどこかのアパートぐらいは借りられると思うが、ずいぶんと限られてくるだろうな。女のひとり暮しなんだからどこでもいいってわけにいかないだろ」

「そうですよね」

家賃の低い家はやっぱりそれなりの設備だと思う。ちょっと心配だ。

「そこで御子柴さんにご相談なのですが」

「なんだ」

私はおそるおそる口を開く。

「えっとですね、二ヶ月ほどの給料を前借りしていただくことは可能かなと思いまして……」

「ダメに決まってるだろ」

「で、ですよねぇ」 

アハハと笑い飛ばして、自分の先ほどの質問を誤魔化すことにした。

ダメ元で相談してみたけれど、厳しい御子柴さんにはやっぱり通用しなかった。でもまぁ当たり前だ。お金がないのは自分の都合なのに、給料の前払いをねだるなんて図々しい。でも今はそうでもしないとお金が工面できない。
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