堅物社長にグイグイ迫られてます
「えっと……」

そんな素敵すぎる条件を聞きながら、だんだんと嫌な予感がしてきた。

そんな好物件はあるのだろうか。いや、絶対にないと思う。でも、もしもあるとしたら―――

「ちなみにその物件って?」

恐る恐る尋ねる私に御子柴さんは、

「俺の家だ」

ああ、やっぱり。
 
御子柴さんの紹介の物件なら安心できるし多少のことは目をつぶろうと思った。けれどまさか御子柴さん自宅だなんて。

「えっと……つまり、御子柴さんと一緒に暮らすってことですか?」

「そうなるな」

御子柴さんは表情ひとつ変えずに深く頷く。

「給料を前払いすることはできないが、引越代や新しいアパートを借りられるだけの金が貯まるまで俺の家を貸してやることはできる。ちょうど一部屋余っているから好きに使ってもらって構わない」

「本当にいいんですか?」

思わず聞き返してしまう。

「私が御子柴さんの家に暮らしても問題ないんですか?」

「問題ってなんだ」

御子紫さんが低い声でそう返す。

「あ、いや、ほら。私がここに暮らしたら、その……彼女さん怒らないかなぁと思って」

「……彼女?」

そう呟いた御子柴さんの眉間に深い皺が刻まれる。これは機嫌が悪くなるときの前兆だ。彼女のことを話しただけなのに。
< 63 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop