君からのヘッドフォン
親族席は何席か空席があった。

泣き崩れて退席でもしたのだろうか。


「栞帆、帰ろっか」

「うん」


そう言って式場を後にする。

すると、受付のそばに綺麗な女の人と…和久がいた。


どうして、だろ。


「あ、浩美さん」

「あぁ、早苗さん。お久しぶり。今日は…ありがとう」


浩美さん、と呼ばれたその女の人はお母さんの名前を呼ぶと大粒の涙を流した。


「こちらこそ、本当にご愁傷様です」

「…お互い様よ」


どうやら、この人は…そういうことらしい。

となれば、その横に立っている和久はこの人の子どもに当たるわけで。
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