君からのヘッドフォン
…あぁ、良かった。

返事言わなくて良かった。

付き合って欲しいって、言わなくて良かった。


和久に視線を向けると、向こうもそれに気づいたのか、大きく瞳が揺らいだ。


私は淡く微笑んで、涙を流して。

その場を走り去った。

和久の声が聞こえた。「栞帆っ」と大きく受付に響いたその声はきっと注目を浴びていたと思う。


私はそのまま、走った。

長い間、ずっと。

外は真っ暗だった。

月明かりしかなかった。


気づいたら、海の側、防波堤の上に座っていた。

ここまでどうやってきたのかは全然わからない。

ただ、キラキラ光る海を見ていた。
< 151 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop