卒業式の祈り
ベッドの傍らの丸椅子に座って、彼の手をそっと握る。

しばらくは、黙って互いに見つめあっていた。



三井くん、痛かったね、辛かったね、


でも、頑張ったね、戻って来てくれてありがとう。


心の中で、彼への思いが溢れてくる。


私は、彼の卒業証書を持ってきているのを思い出して、それを彼から見えやすいように広げた。

「三井勝利くん、卒業おめでとうございます」

あらたまった口調で言うと、彼はちょっとだけ頷いてそっと目を閉じた。

私は慌てて、彼に顔を近づける。
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